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ラブレターフロームカナダ

ラブレターフロームカナダ

道子の日記32~41

第32話、カナディアンフィーリング?


一年間、その英会話教室で勉強した後、
そこの英会話教室を通して
海外のESL学校を安全に紹介してくれるという
そのコースは、
私には願っても無い未来へと続く扉に思えていた。


私は早速次の日、
具体的な留学の話を進めるために
そのカウンセラーと再び会ったのである。


もちろんハワイに一度行った事がある私は、

「アメリカにいきた~い!」

と、
大きな夢を持ち、
親戚のお姉ちゃんがシアトルに住んでいるということもあり、
私の第一希望は

「シアトルか、その近く」

だったのである。




「シアトルですね、う~ん、えっと、で、第二希望は
ロンドンなんですね、、はい、、」


カウンセラーの女の子は
眉間に皺をよせて
私の希望を書いたアンケート用紙を
隅から隅まで読んでいた。


「イギリスはね、物価がかなり高いですよ、、
それに人柄もかなり閉鎖的で、道子さんのようにホームステイを希望
されるならば、アメリカかカナダをお勧めします、、」



「は、、は、、、はい」



私はかなり緊張していた。

夢男においでと言われ、
かなり不純な動機で海外行きを決めた上、
全くの下調べ無しで、


「どっかの英語圏に行きた~い!」


などと
幼児が母親にお菓子を強請るぐらいの軽さで
その英会話学校へ足を運んだものだから、

カウンセラーの一言一言を
しっかりと聞き入れ、
私は彼女の言いなりになっていたのではないだろうか。




「はい、じゃあ、アメリカかカナダにします。」


「で、ですね、道子さんの第一希望シアトルですよね、
私はどちらかと言うとカナダをお勧めしたいんです、、
なぜかといいますと、、、」



カウンセラーは坊さんの説法のような
説得力のある話し方で、
アメリカよりカナダのほうがどれだけいいかを
懇々と話し出した。

今思えば、
あのカウンセラーの個人的意見にはめられたのか?
はたまた
アメリカ行きの生徒が多すぎて、
カナダ行きへを増やさないといけなく、
私が英会話学校の格好の餌食になったのか?

どうしてそのカウンセラーが
あんなにも
必死になって私にカナダを勧めたのか、
私は全く疑うことなく、

「はい、じゃあ、カナダに行きます!」


と、カナダがどういう国かも全く知らずに
その場ですぐに返事をしていた。



その帰り、
近くの本屋により、

「カナダ」

のガイドブックを購入した。


そのガイドブックの表紙には、
熊がシャケを食うえて
唸るように体をのけぞり
威嚇するように両手を上げている写真が載ってあり、
それを見た瞬間
私は大きくため息をつき、


「やっぱり田舎やってんやわ、、、どないしよ、、」


などと少し後悔交じりの
感情が
暗く心を支配しようとしていたのだ。


それでも家に着いた頃には、
持ち前の変な前向き精神が
再び私の心を支配し、


このブログタイトルの


♪ラブレタ~フロ~ムカナ~ダ~♪

と昔流行った

「カナダからの手紙. 平尾昌晃 & 畑中葉子」

はその時の私の心には暗すぎて合わず、



何故だか私は、
サーカスの

♪あなた~からの~エア~メイル~♪
空の上で~読み返すの~♪


「アメリカンフィーリング」

を兄に嫌がられながらも
熱唱し、
家の風呂場で
気分はカナダになっていた。


                       続く

                   
 
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第33話、大胆道子

英会話の方は順調に進んでいた。


ほとんどビギナーだった私は、

「This is a pen!」

から始めたのであるが、
先生もかなり根気よく私に付き合ってくれていた。


運悪く、
私の担当の先生は、
日本人でしかも女性という、
なんの出会いも期待できない状況ではあったものの、

一年後にはカナダに留学できる、
やっと夢男に会える、

と全くなんの保証も無い
夢と希望に、私は全てを託そうとしていた。



私は、
大学を卒業した後、
淀屋橋にある小さな会社の事務を辞めずにずっと続けていた。

辞めて他の職を探そうなんて思ったことも無かったし、
自分にそんな器用な

「転職」

が出来るなんて思ったこともなかったので
ただずるずる会社に留まってしまっただけかもしれない。


それでも
こんな能無しの私でも、十年近くも続ければ
私しか出来ない仕事ができ、
真面目しかとりえの無い私は、
上司からも信用され、
小さい会社ながらも、
自分の居場所を作っていた。


そして十年かけて作った自分の居場所を
いとも簡単に


「どっかいきた~い!夢男に会いた~い!」


と、
風船が膨らみすぎていきなり割れてしまうように、
自分の心の中で
大きな音をたてるように
何かがはじけてしまったのかもしれない、

いるかどうかも分からない男に会うために
全てを投げ出してしまったのだった。


その時の心情を語るとすれば、


「後悔」

は全くなかった。
それよりも、

「希望」

の方が私の心を多く支配し、
その影にちょこっとだけ

「不安」

が隠れていた。



「三十路二年生」

32歳の独身女の決断としては、
かなり大胆ではないだろうか?




そんな英会話に勤しむ毎日を過ごしていたある日のことだった。


その日も英会話から帰ってきて
少しばかり
復習を家でしていた時だった。



「もしもし道ちゃん?」



一ヶ月ほど前に
同窓会で久しぶりに会った同級生から電話がかかってきたのだ。


「あ、麗子ちゃん?」


「うん、実は、今日耳に入れたいことがあって、、、」



彼女はつい先日、
親友の花ちゃんに
隣町で偶然会い、

どうしようか迷ったものの、
私はずっと花ちゃんを探していたのを知っていたので
そのことを告げに電話をくれたのだった。



                             続く





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第34話、花ちゃん情報


「道ちゃん、実はね、、
このまえ隣町に行ったときに偶然、花ちゃんを見たのよ」


「え?花ちゃん?」


「うん、最初は誰だかわからなかったのよ、
なんていうか、、真っ青のスーツ着てて、髪も茶色に染めて
化粧も濃くってね、、

向こうから声をかけてきたんだけど、
最初は、彼女あまりにも派手だから、どうしようか、、
恐くって、、、」



彼女は大きく深呼吸して
再び続けた。


「すぐに花ちゃんだって気がついたんだけど、
かなり変わっていたよ、、、

あれは絶対夜の仕事してるね、、、」



麗子ちゃんはかなり声を落とし、
低い声で最後のワンフレーズを言った。



「駆け落ちしたじゃない、彼女、あれからどんな人生送って
たんだろうね、

そうそう、あの彼とは別れたらしいよ、籍もちゃんといれて結婚生活
送ってたらしいけど、

相手が浮気して、、、」



きっと麗子ちゃんは
私に花ちゃんの情報を伝えてあげよう、という純粋な気持ちで
電話をしてきたのではなかったのだろう。

ただ単に
花ちゃんの人生にそんな言葉が似つかわしいかどうか
分からないが、

奈落の底に落ちようとしている、

いや、落ちてしまった昔の旧友の話を誰かと
共有して楽しみたかったのではないだろうか?

それを共有するのには、
花ちゃんのことをいっぱい知っている私が最適だったのだ。


「そうなのよ、
あの彼、花ちゃんと二人の子供置いてまた誰かと駆け落ちしたらしいの、
二人目の子供が生まれてすぐに居なくなったって
言っていたわ、、、」



そんな暗い話題をさえぎるように、


「で、花ちゃん何処に住んでいるか聞いた?」


「いえ、聞いてないわ、聞いたら、また遊びに来て、って言われても嫌だし、
でも働いているところは聞いたわよ、

隣町のスナックって言ってたけど、ソープかもしんないしわよ、
それかエスコートガールかも、、
スナックで働いているっていうより
そんな雰囲気だったわ、、、スカートもすっごく短くって、
上の服なんか
半分おっぱい出てたわよ、、、すごかったんだから、、
もう道ちゃんに見せたかったわ、」


麗子ちゃんの話しが
BGMのように
私の脳裏をよぎった。


「戻ってくればいいのに、、、」

「え?何?道ちゃん、何処に彼女が戻るのよ?」

「この町によ」

「戻れるわけないじゃない、ああいう風に皆を騙して駆け落ちしたから、、
それに花ちゃんの両親もどっかへいっちゃったしね、、

花ちゃんでさえ、彼女の両親何処へ行ったのか知らないみたいよ、、

彼女、子供が居なかったら天涯孤独だったわ、って冗談半分で笑いながら
言っていたけど、

苦労したんじゃない、
どうみてもあれは30歳には見えなかったわ~。」






彼女は私に何を伝えたかったのだろうか?




「今度飲みに行こうって誘われたけど、ね~え~、電話番号教えなかったわ、
なんだか恐くって、、ああいう人たちと付き合うのってね、、、」



私は、受話器を持つ手がしびれ始めていた。
彼女との会話に疲れ果てていたのだろう、、、。



                            続く



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第35話、おセンチ道子

麗子ちゃんは、
花ちゃんの連絡先も知らないのに、
面白半分で
私に連絡してきたのだった。


花ちゃんが駆け落ちした頃、
私の母親を含む、近所のおばさんたちは、
花ちゃんを、花ちゃんの家族を
哀れむようなそぶりを見せて
楽しんでいた。


それが今もなお、
人が入れ替わっても続いている。



昔の麗子ちゃんは
花ちゃんが逃げたことを、純粋に心配していたはずだったのに、
彼女はいつからそういう風に変わったのだろう?




人の不幸を笑って、
人を蔑んで、

その目的はいったいなんなんだろう?


「ごめん、ちょっと今から出かけないといけないし、、」


そんな私も、麗子ちゃんにはっきりいえずに
うやむやに逃げようとしている。



私だってずるい人間だった、、、。


そのまま麗子ちゃんとの電話を切った私は、
それから暫く、
自分をずっと責めていた。


どうして電話口で、


「なんで恐がるのん?昔の友達やろ?一緒に遊んだ仲やろ?」


ってきつくいえなかったのだろうかと、、、。





大人になって、
私も、32歳の普通の女性がするように
人並みに働き、色んな苦労もし、失恋も経験してきた。

もちろんいろんな楽しい思い出もあるが、

私の中の辛い思いでは
私に


「前向きに生きる」


という考えをいっぱい与えてくれた。


今でも、
あの時の花ちゃんの行動が正しいか
正しくなかったのか?
と聞かれると、

もちろん

「正しくなかった」


と、答えるだろう、
だが、
私は花ちゃんを責める気もないし
そんな権利もない。

そして神様が与えてくださった


「前向きに生きる」

により、
出来る限り
彼女の行動を理解しようとずっとしてきた。



そして
私の出した彼女に対しての答えは、



「彼女は二人子供がいて、強く生きようとしている」


また再びあの笑顔に会えるかどうか
分からないけれど、

これからもずっとあの時の気持ちのまま
彼女をずっと好きでいたいと切実に思った、、、。



「おせんち道子」




になった私は、
その夜、
窓から見える星に向かってこう言った。


「花ちゃん頑張って、、
会えなくても
これからもずっと応援してるから、、、。」


と、何故か目に涙を溜めながら
独り言を言っていた。





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第36話、ラブリー山君

「ねえね、道子さん、山くんのこと覚えてる?
ほら、東京本社の営業部の子、
このまえ東京出張で会ったんだけど、

道子さん、昔から彼のこと好いって言ってたよね?」



「ええ?、山くんですよね、覚えてますよ、
格好いい~頑張ろう~って思ってたんだけど、

最近、東京に行く機会も無いし、山君には彼女がいるし、
そのままになっちゃって、、、」



「その彼女とね~最近別れたらしいのよ~」

「え?別れた?」


「それにね、彼ね、今度大阪に転属になっちゃったんだって、
大阪に出来た新しい部署に来ることになったって、、、

今週末にも来るらしいわよ、彼、
道子ちゃん、もしよければ改めて紹介するわよ、、」



「え、でも、先輩も山君のこと好いって言ってたじゃありませんか、、」


「いいのよ、道子さんに譲るわ、私はもう結婚前提の彼氏も居るし、、、」




と、思いもかけず、諦めかけていた会社内で、
素敵な話しが舞い込んできたのである。



山君とは
私より2年ほど後に入ってきた後輩で、
男前にチョイ足を踏み入れているけれど、
少々背の低い男性で、
きっちりと私のストライクゾーンに

「すっぽり」

入っている
超私好みの男性で、
すこしチョイ悪で野生的なところがあり、
人数は少ないまでも
熱狂的な女子社員が数人いた。


一年に一度ほどの東京主張のときは
山君が必ず上司に命令されて
私達を会社近くの居酒屋で接待してくれていたのだ。



レインボーブリッジが見える
マンションに一人で住むという彼の部屋に
一度でいいからあの
セクシー下着で夜這いして、
いつかあの野性的な彼にぶんぶん振り回されたいと、
切実に願いつつも、

会社に内緒にしなければならない


「社内情事」


的なことは
私達の間では一切起こらず、
毎回未使用のエッチ下着の入った旅行カバンを小脇に抱え、
いつも爪を噛みながら
かなりの未練いっぱいで
東京駅を後にしていた。

もちろん
新幹線の中では、
いつもビールを5本と駅弁を買い込み、
大阪から一緒に同行した同僚と向かい合わせの席で
そこらへんのおっさん顔負けの飲みっぷりで、
ビールをあおるように飲んで騒いでは、

ふとおセンチになり、
薄暗くなりつつある窓の景色を眺めては
山君をいつも思い出していた。

どうして、

「あ~あなたの部屋から夜明けのレインボーブリッジが見たいわ~」

と、軽く
そして意味ありげに言えなかったのだろうかと
後悔ばかりしていたのだ。




その彼が、
はるばると東京からやってくる、

あの、私の心をくすぐる東京訛りのしゃべり方を
毎日聞けるかもしれないのだ。




その時の私の心を表現するとするならば

「踊っていた」

というよりも、

「踊り狂っていた」

が最適ではなかっただろうか、、、。



カナダ留学が半年後に迫ったにも関わらず、
私は、なんならカナダ留学なんて止めてもいいや、
という考えに変わり、

「留学のため退社」



「寿退社」

になるようにと
全力投球しようとしていた。



そして、先輩の

「改めて紹介するから、、」

のその言葉に
私は自分の全ての人生を
いつものように
賭けようとしていた。


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第37話、哀しい嘘のつける~人~♪

その夜に、夢男が久しぶりにあの浜辺へやってきた。

私達はいつものように
砂浜に肩を並べて、
海に向かって座っていた。

夫婦なのだろうか、
カモメのツガイが綺麗な鳴き声を空に響かせながら
気持ちよさそうに飛んでいて、
夢男と私は二人してそれを目で追っていた。


その日の夢男はかなり無口で、
それでいて少し怒っているのだろうか、
口を少しつんと尖らしたまま
私の方を見向きもせずに
カモメを見続けていた。


私からもこれといった話も無かったので、
カモメが空のかなたに消えてしまった後は、
なんだか手持ち無沙汰になり、
下を向いて、右手で砂を掴んでは
左手にぱらぱらと落としたりと
意味の無い仕草を休むことなく続けていた。





「道子、僕の住んでる海外に来るって約束したのに、、」

そんな重い雰囲気の中、
話し出したのは夢男からだった。


「え?行くよ、行く予定やよ、、」


かなりびっくりしながら答えていた。
昼間現実の世界で起こった出来事を
夢の中の夢男はすべて知っていたのだ。


「だって、寿退社に変えるって、、」


「あ~山君のこと?一か八か頑張ってみようかと思ってるけど
カナダには行くよ、、」



私の答えに納得がいかないのか、
まだ口を尖らせたまま
海を見ていた。


「道子は知らんねんな、、赤い糸って一本しかないねんで、、
生まれたときからつながって生まれてきてんねんで、、、
それが見えてないんか?」



そういい終えるないなや、
私の顔を真正面から見てきた。

ずっと尖らせていた口を元に戻し、
今度は切ない目で私を見つめてきたのである、、、、

どうしたらいいものかと
悪いことを言ってしまったのかと
その場の状況が読めない私は、おどおどし始め、
正面から彼の目を見る事が出来なかった私の目は泳ぎまくっていた。

夢男の言う、赤い糸なんて
見たことなど一度もなく、
彼の質問にどう答えていいか分からずにいた。

「見た事がない」

といえば
夢男をきっと傷つけてしまう、
何故だかそれだけははっきりしていて、
何も言う事が出来ずにいたのだ、、、



と、そこで夢から覚めた。

なんとなく目覚めの悪い朝だった。

頭の中を整理するように、
夢の中でいったい何が起こったのだろうかと
起きてすぐに考え出したが、

カーテンの隙間から差してくる、
明るすぎる朝日によって、

私は徐々に夢の出来事を忘れかけていた。

と、夢男のことを忘れると同時に
その日の現実に起こりうるだろう予定を思い出していた。

その日はなんといっても
東京から山君が来る日で
彼とは二年ぶりの再会だった。


朝食を終えた私は
クローゼットから
私は黒のボディコンタイプのスーツに
白いブラウスを取り出した。

32歳に相応しい
色気がありキャリアっぽく見えるスーツを選んだのである。


そして鏡に向かった私は、

「はい、おまけ~!」

といいながら、
ブラウスの第二ボタンまで外した。

そう、
ちょっと運がよければ、
何かの仕草で
無理矢理出来た谷間を山君にお披露目できるかもしれない
距離が第二ボタンだったのだ、、、。


夢男のことなどとっくの昔に忘れていて、
その時の気分は既に

「ラブリー山君ゲット!」

になっていた。

顔はかなりにやけていたに違いない、
大人になってもっと格好よくなっているだろうと思われる
山君を想像しながら、


♪折れた~タバコの~吸殻で~♪
♪あなたの~嘘が~わかるのよ~♪


などと、

「嘘」

を歌いながら
山君にぶんぶん振り回されている小未来の自分を想像し
少し長めのスカートのスリットを押さえながら、
私は満員電車に駆け込んだ。


          
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「嘘」は会社のおっちゃんにウケルからいつもカラオケで歌うわ、私の18番よ、って人は、
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第38話、哀しい嘘のつける~人~♪2


地下鉄の階段をあがり地上に出で、
私はすぐに会社の方に急ぎ足で歩いた。

地下鉄の真上に立っている私の会社が入ったそのビルは
駅から徒歩1分というかなり便利なところにあった。

そして
そのビルの正面玄関から
自動ドアをくぐり、中に入ろうとした時だった、


私はすごいものを発見したのだ、、、


「ハーレイ、、、、」


会社の駐輪場に止まっていた
赤い母体のそのハーレイは、
かなりの光沢を持ち、
朝日の光によってハンドルのシルバーが
光輝いていた。

その前を通る殆どの人が、
時間が無い中、急ぎ足を止めて、
そのハーレイを見るほど魅力的だったのだ。


私はすばやくそのバイクに近寄ると、
黒い光沢のあるシートに手を置いた。





山君は、ちょっとしたボンボンだと先輩から聞いていた。
山君の親は東京にちょっとした不動産を持ち、
彼の親が所有するマンションの一部屋に彼は住んでいると言っていた。
それが
レインボーブリッジが見えるマンションだったのだ。

そんな親の元
お気楽息子を演じるように、
彼の趣味というのがハーレイ、BMのオープンカー、
なんだかわけのわからんめちゃくちゃ高値のするマウンテンバイク、
という、
まあ金のかかることばかりをしていると聞いていた。


大阪ではそんなすごいハーレイを一度も見たことの無い私は
それがすぐ山君のだと気がついたのだ。


シートに置いた手を動かし、
山君がお尻が置かれて
いたかもしれないというシートを、
ゆっくりとなでるように
さすった。


もう、ここまでくると、

「超変態ババたれ道子」

で、
私の中の変態道子を全員
緊急出動させて


人が行きかう中、
人がそのハーレイを見守る中、


何の躊躇もなく
自分の頬をそこに当て、匂いをかいでいた。



山君のものかもしれないバイクと格闘すること10分、
遅刻に気がついた私は
急いで自分の部署のあるフロアへ急いで行った。



「道子さん、道子さん、」


自分の席に着き、
荷物を置くと
すぐに先輩はやってきた。


「山君きょうは来てるわよ、、
さっきちょっとだけしゃべったのだけど、

昨日の夜、自分のハーレイに乗って東京出てきたらしいわよ~
相変わらずかなりワイルドよね~」



「そ、そ、それで、先輩、、、」


私の声は上ずっていた。
ワイルドなボンボン山君に
ぶんぶん振り回される未来への想像が
あのハーレイによって、
私の頭の中でいっぱいになっていたからだ。


「もちろんよ、予定入れたわよ~道子さんと私の山君歓迎会を~!ルンルン」


「嬉しい~!有難うございます!!やっぱり持つべきものは
世話好きな先輩ですよね~!」



興奮しすぎて
今にも鼻から勢いよく血が吹き出そうで、
鼻を押さえながら
コンピューターのスイッチを入れた。




「世話好きな先輩」


私は彼女をそのように思っていた。
先輩は彼氏もちゃんといるし、
それにその彼と婚約までしていると
言っていたからだ。


「今週の金曜日、会社が終った後よ、ルンルン」


先輩はそれだけを告げると、
再び自分の席に戻っていった。


先輩を信じきっていた私は、
その時の、私にも勝る彼女の浮かれようを
見逃してしまっていた。


そして、
ワイルドボンボン山君に会える日を待ちわびながら、
彼に気に入られるようにと、
金曜日の歓迎会まで、
私は色々と作戦を練る事になったのだ、
このおばかな脳みそを使って、、、。



                           続く


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第39話、哀しい嘘のつける~人~♪3


歓迎会は明日に迫っていた。

私は再びクローゼットを開け、
何を着ていこうかかなり悩んでいた。


ワイルドボンボン山君は、きっとお嬢様系はお気に召さないかもしれない。
かといって、
セクシーキャリアウーマンもいつもの手で
彼はきっと見飽きている、、、


「ライダーな彼ねえ、、、ライダーが好きそうなもの、、、」

私は独り言をぶつぶついいながら、
昔着た、色んなコンパコスチュームを手にとっては、
あれでもない
これでもない、と
ベッドに放り投げては次の引き出しを開けたりしていた。

暫く悩んだ後、
私は一枚のワンピースを見つけた。
その黒のワンピースは下がパンツで
生地が薄くてストレッチが利いているせいだろうか
かなり体にフィットし、
嫌なほど綺麗に体のラインをアラワにさせていた。

昔、親戚のお姉ちゃんの結婚式でハワイに行ったときに買った物だった。
お姉ちゃんの夫となった外人の彼の発想で

「男をゲットするなら、ぜったいこの服だよ、、」

と勧められ、
私とおねえちゃんは一枚ずつそれを買った。
今思えば、すでに男をゲットしていたおねえちゃんは、
あれをどうして購入し、その後、どのように使っているのだろうかと
疑問に思ったりもしている。
次の男をゲットするためだったのか、
それとも、、、、むふふ、、。

どんなものかと説明すると、

「ルパン三世」に出てくる
峰フジコちゃんがよく着ていた赤のライダースーツによく似たデザインで、
色は黒、
パンツの長さは
それこそ半ケツではなかったが、

「超ホット~!」

だったのである。

それを、
7年前にすごいメンバーが集まるというコンパで、
(医者と弁護士)
私は勢い余って着ていった。


もちろんのこと、
席では大ウケで、
調子をこいてしまった私は、

「その洋服だとピンクレディとか似合いそうだね~」

の弁護士の一言で、
彼に気に入ってもらうために、

おつまみについていた
キャロットスティックを
両耳の後ろに挿し

なんとそこでお尻を振り振りさせながら、


「ピンクレディーのUFO」


を完璧な振り付けで踊ったのだ。

それがかなりウケ、
今度は

「ピンクレディメドレー」


を何の間違いもなく全ての曲を踊り、歌い狂うように熱唱したのである。






もちろんのこと、
その日も
他の日と別段変わりなく、
私は一人で最終電車に乗り、
皆が誰かに送ってもらうなか、
一人で家に帰った。

それから1週間後、友達の一人がその弁護士と付き合いだしたのだ。


「彼がね、みっちゃんって面白い子だね、今度カラオケ行くときには
絶対呼ぼうね、って言っているのよ、だいぶ道子のこと気に入ったみたいよ、、」




そう、
私の気に入られ方というのはこの程度だったと自覚していたものの、
心の中では、

「気に入ったんやったら、なんで私と付き合えへんねん~!」

と叫んでいた。


そんな悲しいいわくつきのワンピースだったが、
ワイルドな山君ならば
絶対このセンスを受け入れてくれるだろうと、

私は次の日、
再び持ち上げ効果抜群のブラに
そのスーツを着て、
膝が隠れるほどのブーツを履いた。


「オフィスにはエッチすぎるライダー道子」

の出来上がりだった。

                     続く


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第40話、哀しい嘘のつける~人~♪4


待ちにまった金曜日、
道子の所属する部署はかなり忙しかった。

午前10時、大手の会社の社長さんが、
大きな契約を結びにやってくる予定があり、
部長はあっちへいったりこっちへいったりと
忙しげに書類をかき集めていた。



部長「あ、来たぞ、大丸染料の社長さんがお見えになった、
道子くん、後でいつもの美味しい昆布茶頼むよ、そう、あの京都で買ってきたやつ、」


道子「あ、部長さん、今日は、、、」


部長「道子君、頼んだぞ、、、」




バタン(部屋のドアを閉め、部長は急ぎ足で会議室へと向かった。)




道子「今日は、、、人前に出れるような格好じゃない、、、ん、、で、、す、、
って、もう遅いか、しょーないな、この格好でいくか、、」




お茶くみを頼めそうな同僚も忙しげに仕事をしているため、
道子はそのままキッチンへ行き、
取って置きの昆布茶を2つ入れ、会議室へ向かう、、







コンコン(道子が会議室のドアをノックする)


部長「どうぞ~」


道子「お待たせいたしました~~」


部長「み、み、道子君、、なんだその格好は、、」


大丸染料の社長「むふふふ、、、」








MICHIKO








道子「だって、、部長が、、、お茶入れろっていうから、、」



大丸染料の社長「う~んいいですね、ここの会社はこういうサービスもあるんですね、知りませんでした^^いや~この契約を機にこれからもよろしくお願いします。」
(深々と頭を下げる社長だが、目は道子に釘付け、、、)



                        続く


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第41話、哀しい嘘のつける~人~♪5

忙しかったのだろうか、山君は1時間ほど遅れて
予約を入れておいたレストランへやってきた。

すきっ腹に、ちょっとしたつまみと沢山のビールで
私と先輩はその1時間をつぶししていたものだから、
山君が来た頃には
私達はかなり出来上がっていた。


「すいません、遅れてしまって、、書類片付けるのに戸惑って、、」


そう言いながらやってきた山君は
センスのいいノータックの黒のパンツ、
白のシャツにはピンクのタイを合わせていた。
何処から見ても今風の男の子だったが、
ただそれに似合わないライダーなもみ上げが
超ワイルドで、男の匂いをぷんぷんさせていた。

私は少々酔っていたせいもあり、
そんな山君を穴があくほど見つめながら、
再び彼に「ぶんぶん振り回されたい」願望が
にょきにょきと顔を出し始めていた。


私と先輩は4人席に向かい合って座っていた。

山君はジャケットを脱ぐと、
なんの躊躇もなく、カバンとジャケットを先輩側の椅子にかけ、
かなり自然に私の横に腰を下ろしたのだった。

私より20センチ先にいる山君は
くるりと私の方に振り向くと、
すこしシャイな目で


「元気にしてましたか?」


と、私に微笑んできたのである。
もちろん、
そのときの私は、
耳から、鼻から、穴という穴から
火山が噴火するように
血が吹き上げてくるんじゃないだろうかと
思われるぐらい血圧は上がり、
それを押せ込むように大きく深呼吸し、
目をすこし閉じた後、

「はい、元気にしてました、、」

と、吐息とともに、震える甘い声で答えてしまったのである。



私達は一瞬見つめあっていた、
私が山君を感じるように、
山君も私から何かを感じている、
この何かって
ひょっとして


「両思い?」

などと先走る私の心を打ち消すように、
先輩が話し出した。


「ささ、お腹空いたしなんか頼もうよ、、、」


彼女のその一言で
我に返った私は、かなりかなり後ろ髪をひかれながらも、
20センチ先の山君に別れを告げ、
正面を向き
先輩を入れての会話を始めたのである。



山君は色々なことを話してくれた。
東京での暮らしに少し飽きていたこと、
大阪の新事務所に配属され、かなり意気込んでいること、
一年ほど前に彼女とは別れて、
今は独身であること、
もちろんのこと、ただいま彼女募集中だと言うことも。


そして最後にポツリと

「道子さんに会うの,すごく楽しみにしてたんです、、、」


が付け加えられたのだ。


その頃には私の左側に座っている山君の右腕は
私の椅子の背もたれにずっと置かれており、
もし私が背もたれにもたれようものなら
山君の親指らしきものが
私の背中に当たっていた。
そして山君も、私の背中が彼の指に当たっているにも関わらず
それをどかす気配もなかったのだ。

私は
山君を背中で感じるエロチシズムを堪能するように、
体を前後させ、
彼を背中で感じたり、
恥らって前のめりになったりを繰り返す異様な人になっていた。


それからも、酒の力も借りて、
私達のお話がどんどんと盛り上がろうとしていた、
そんな時、


「ちょっとお手洗い、、、」

先輩がそういって席を立ったのだ。


先輩の後姿を見送る私に、
山君は20センチの距離を10センチに縮めて、
少し声のトーンを落としてこう話始めた、、、。


「実は、先輩から道子さんの話し聞かされて、、その、実は僕も、前から道子さんのこといいと思っていて、、、」

先輩が私の気持ちを伝えておいてくれたのだ。

「有難う~先輩!!」

と、心で大きく叫びながら、
この後に続く話しを読もうとしていた、、、

私は酒の勢いに任せて、
普段なら恥ずかしくて出来ない色気光線を彼に放ちながら、
心で、

「お願い、もっと私がとろけてしまう言葉を言って~」

と再び叫んでいたのではないだろうか、、、

その頃には、
椅子の背もたれに置かれていた山君の右手は、
しっかりと私の背中に置かれていて、
その右手から伝わる手のぬくもりを
私は体全身で受け止めるように、彼を感じていた。





「その、、、道子さんさえよければ、僕の彼女になって欲しいんだ。」


私が想像していた以上の言葉が返ってきた。


「私でいいの?」


「うん、道子さんじゃなきゃ嫌なんだ、、」








ー道子さんじゃなきゃ嫌なんだ、嫌なんだ、嫌なんだ、嫌なんだ、、、、-






私の耳にリフレインのように響いたこの台詞で
私は殆ど気が遠くなりかけていた。

ああ、ここで酔いつぶれてこのまま彼にお持ち帰りされたい、
などと思っていたのかもしれない、


「お願い、、、、」


と言いかけたところで
邪魔者がトイレから帰ってきたのである。


この
「お願い」
の後には、
「私を奪って、、、」

という、
私的殺し文句が加わる予定だった、、、。


                        続く



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